建設業の許可をスムーズに取るには、どうすればよいのでしょうか。
この記事では、建設業の許可をすぐに取るための方法やスムーズに許可を取るための準備、行政書士へ依頼した場合にかかる料金などについて、詳しく解説します。
建設業の許可とは

建設業の許可とは、一定の建設工事を請ける場合に必要となる許可です。
許可を取らずに許可が必要な工事を請けてしまえば重い罰則(原則:3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人の場合:これに加えて1億円以下の罰金)の対象となりますので、無許可営業は絶対にしないようにしましょう。
建設の業許可は次のように細分化されており、自社が行いたい事業内容に合わせて必要な許可を選択して取得する必要があります。
- 知事許可と国土交通大臣許可
- 一般建設業許可と特定建設業許可
- 29に分類された工事業種それぞれの許可
それぞれの違いは改めて解説しますが、ここではまず、「建設業の許可」とひとくちに言っても多くの種類が存在することを知っておきましょう。
建設業の許可が必要な場合

許認可が取得となる業種の多くは、そもそも許認可を取得してからでなければ業務を行ってはいけない決まりになっています。たとえば、たとえ夫婦のみで細々と営む飲食店であっても、飲食業許可を取得しなければなりません。
一方、建設業の許可は、建設業を始めるからといって必ず許可を取らなければいけないわけではありません。
法令上、建設業の許可を取るべきなのは「「軽微な工事」以外の工事を請けたい場合」のみです。
また、法令上は必要なくとも、「元請から建設業許可の取得を要請された場合」や「自社の営業力を強化したい場合」などに建設業許可を取得するケースもあります。
では、それぞれ詳しく見ていきましょう。
「軽微な工事」以外の工事を請けたい場合
建設業を営む場合であっても、「軽微な工事」のみを請けるのであれば、建設業の許可を取得する必要はありません。
この「軽微な工事」とは、次の工事です。
- 原則:1件の請負代金が税込500万円未満の工事
- 建築一式工事:1件の請負代金が税込1,500万円未満の工事と木造住宅で延べ面積が150㎡未満の工事
つまり、これらの工事以外の工事を請けたいのであれば、建設業の許可が必要であるということです。
また、500万円(建築一式工事は1,500万円)未満かどうか判断する際には、次の点に注意をしましょう。
注意点1:税込金額で判断する
軽微な工事である500万円(建築一式工事は1,500万円)未満に該当するかどうかは、税込金額で判断する決まりとなっています。
消費税率10%の影響は大きく、税別455万円の工事であっても税込金額に直すと500万円以上となりますので、注意しましょう。
注意点2:工事の無理な分割はNG
500万円(建築一式工事は1,500万円)未満に該当するかどうかは、工事1件ごとの金額で判断します。
請求書や契約書のみを無理にこれらの金額以下に分ければよいという問題ではありませんので、誤解のないよう注意しましょう。
注意点3:材料の支給があれば材料費と運送費を加算して判断する
工事によっては、元請けさんや注文者さんが材料を提供する場合もあるかと思います。
この場合には、その材料の市場価格や運送費を加算して500万円(建築一式工事は1,500万円)未満かどうかを判断することとされています。
注意点4:粗利などではなく請負金額で判断する
500万円(建築一式工事は1,500万円)未満かどうかは、あくまでも請負金額で判断します。
たとえば、800万円(=500万円以上)の大工工事を請け負うのであればその時点で建設業の許可が必要となり、仮にこのうち400万円を下請けに出して手残りが400万円になったからといって、建設業の許可が不要となるわけではありません。
元請から建設業の許可取得を要請された場合
たとえ法令上は建設業の許可が不要な「軽微な工事」のみを請ける場合であっても、元請けさんから建設業の許可取得を要請される場合があります。
この場合において、今後もその元請さんから工事を請けていきたいのであれば、現実的に許可取得へ動かざるを得ないでしょう。
建設業界は昨今、コンプライアンス意識が高まっています。
この流れで、建設業の許可を持っていない事業者は現場に入れないとの方針を掲げるケースが増えていますので、要件を満たせそうであれば、早めに許可取得へと動いておくとよいでしょう。
自社の営業力を強化したい場合
建設業の許可を持っていることで、注文者さんや元請けさんに対して一定の安心感を与えることができます。
特に、自社が元請として工事を取っていきたい場合には、建設業の許可を持っていることが1つのアピールポイントとなることでしょう。
そのため、自社の営業力強化の一環として、建設業の許可を取得することが考えられます。
建設業の許可の種類

建設業の許可は1種類ではなく、厳密に言えばぜんぶで116とおり(知事許可と大臣許可の2種類×一般建設業許可と特定建設業許可の2種類×29業種)も存在します。
このなかから自社に必要なものを選び、たとえば「愛知県知事許可の、一般建設業の、大工工事」「愛知県知事許可の、特定建設業の、消防施設工事」のように組み合わせていくわけです。
では、それぞれどのように選択すればよいのでしょうか。
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
知事許可と大臣許可
知事許可と大臣許可の違いは、建設業を営む営業所の所在地が、1つの都道府県のみにあるのか、複数都道府県にあるのかです。
営業所がある地域ごとに、次のように分類されます。
- 1つの都道府県内にのみ建設業の営業所がある場合:その都道府県の知事許可
- 複数都道府県に建設業の営業所がある場合:大臣許可
具体例は、次のとおりです。
- 建設業の営業所が愛知県半田市のみにある場合:愛知県知事許可
- 建設業の営業所が愛知県半田市と愛知県一宮市にある場合:愛知県知事許可
- 建設業の営業所が愛知県常滑市と三重県四日市市にある場合:大臣許可
営業所を設ける場所によって必要な許可が異なるため、こちらは分かりやすいのではないでしょうか。
建設業の営業所とは
ここでいう「営業所」とは、本店や支店のほか、常時建設工事の請負契約を締結する事務所を指します。工事事務所や単なる資材置き場、資材加工場などは、そこで工事契約の締結などを行わない限り、建設業法上の「営業所」ではありません。
また、知事許可が必要か大臣許可が必要かは、あくまでも営業所の場所による違いであり、実際に工事を行う場所は関係ありません。
たとえば、愛知県知事許可を持っている建設業者が三重県や滋賀県が現場となる工事を請けることは何ら問題がないということです。
ただし、あまり遠方の工事を請ける場合には、許可取得後の運用上、工事を施工する際の配置技術者に注意が必要となるでしょう。
一般建設業許可と特定建設業許可
一般建設業が通常の許可で、もう一段階厳しい許可が特定建設業の許可です。
ただし、一般建設業の許可さえ持っていれば、金額の上限なく工事を請け負うことができます。たとえば、10億円や20億円、100億円の工事であったとしても、一般建設業の許可で請け負えるのです。
一方、次の場合には、特定建設業の許可が必要となります。
元請けとして工事を請け、かつ、1件の工事あたり合計税込4,000万円(建築一式工事では6,000万円)以上を下請けに出す場合
つまり、次の場合には一般建設業許可で問題ありません。
- 1件の工事について下請けに合計4,000万円(建築一式工事では6,000万円)以上発注することもあるが、そもそも元請で工事を請けていない場合(すべて下請けである場合)
- 元請けとして工事を請けているが、1件の工事について下請けに合計4,000万円(建築一式工事では6,000万円)以上もの金額を発注することがない場合
元請として工事を請け、しかも下請けに大きな金額の工事を発注する企業が万が一雑な監理をしたり倒産してしまったりすれば、その影響は甚大となります。
そのため、特定建設業の許可では、より厳しい許可要件が課されているのです。
29業種それぞれの許可
建設業許可は、次の29業種に分類されています。
- 土木一式工事
- 建築一式工事
- 大工工事
- 左官工事
- とび・土工・コンクリート工事
- 石工事
- 屋根工事
- 電気工事
- 管工事
- タイル・れんが・ブロック工事
- 鋼構造物工事
- 鉄筋工事
- 舗装工事
- しゅんせつ工事
- 板金工事
- ガラス工事
- 塗装工事
- 防水工事
- 内装仕上工事
- 機械器具設置工事
- 熱絶縁工事
- 電気通信工事
- 造園工事
- さく井工事
- 建具工事
- 水道施設工事
- 消防施設工事
- 清掃施設工事
- 解体工事
誤解をしている人も少なくないのですが、このうちどれか1つでも取れば他の業種も自由に請けられるようになるわけではありません。
たとえば、「屋根工事」で建設業の許可を取得したのであれば税込500万円以上の屋根工事は請けられるようになります。しかし、大工工事は引き続き軽微な工事(税込500万円未満の工事)のみしか請けることができません。
同様に、その名称から勘違いされてしまいがちですが、「建築一式工事」や「土木一式工事」を取得したからといって他のすべての工事が金額の制限なく請けられるわけではない点にも注意が必要です。
たとえば、建築一式工事の許可を取得した場合には、家1軒やアパート1棟をまるごとプロデュースするような一式工事は金額の制限なく請けることが可能となります。もちろん、その中に含まれている大工工事や屋根工事などを自社で施工することや、一部の工事を下請けに出すことも可能です。
一方、500万円以上となる屋根工事についてのみの引き合いがあったとしても、別途屋根工事の許可を持っていない以上は、これを請けることはできません。
この点はよくご理解いただいたうえで、取得すべき許可業種を検討される必要があるでしょう。
建設業許可取得に必要な5つの要件

建設業許可を取得するためには、次の5つの要件を満たさなければなりません。
それぞれの内容は、次のとおりです。
経営管理責任者がいること
建設業の許可を取るためには、経営管理責任者の存在が必要です。
経営管理責任者とは建設業の経営を管理する責任者のことですので、経営陣(個人事業の場合:個人事業主本人、法人の場合:監査役等以外の常勤役員)のなかから選任しなければなりません。
経営管理責任者となるためには、建設業の経営経験が5年以上あることが必要です。
経営経験にカウントできるものの代表例は、次のとおりです。
- 建設業を営む個人事業主としての経験
- 建設業を営む法人での役員(監査役等以外)の経験
これらの経験は合算することも認められています。
なお、経営を経験した建設業での工事業種は、今回許可を取ろうとしている業種と同じであっても違っていても問題ありません。たとえば、今回大工工事の許可を取ろうとしている場合において、過去に経営経験を積んだ建設業の業種が屋根工事であっても良いわけです。
また、過去に経営経験を積んだ建設業者が、建設業の許可を持っていたことまでは求められていません。そのため、たとえば個人事業として独立してからずっと建設業を営んできた人が6年目に入った場合には、その個人事業での経営経験で経営管理責任者の要件を満たすことができます。
ただし、一定の証拠資料が必要ですので、書類の管理がきちんとされていなかったりそもそも確定申告をきちんとしていなかったりすれば、申請が難しい場合もあります。
営業所ごとに専任技術者を配置すること
建設業の許可を取るためには、営業所ごとに専任の技術者を配置しなければなりません。
一般建設業の専任技術者となれる人は、次のいずれかを満たす人です。なお、特定建設業許可の場合には、更に厳しい要件を満たさなければなりません。
- 所定の資格を保有している人
- 所定学科の高校または大学卒業後、5年または3年以上の実務経験のある人
- 許可を取得しようとする業種について10年以上の実務経験のある人
専任技術者となれる資格は業種ごとに異なっていますので、こちらの表で確認するとよいでしょう。表の中に「〇」がついているものが、一般建設業許可の専任技術者となれる資格です。また、「◎」が付いている資格を持っていれば、一般建設業でも特定建設業でも専任技術者となることができます。
専任技術者は必ずしも役員などのなかから選任する必要はなく、役職のない一従業員であっても構いません。ただし、専任技術者は営業所に専任である必要がありますので、他の建設業者の専任技術者との兼任や複数営業所での兼任はNGです。
また、仮に突然退職されてしまった場合、他に専任技術者の要件を満たす人がいなければ許可取り消しの原因となってしまいます。そのため、できるだけ退職の可能性が低そうな人を選任したほうがよいでしょう。
なお、専任技術者と経営管理責任者とは同一人物であってもOKです。
欠格要件に該当しないこと
建設業の許可には、一定の欠格要件が定められています。欠格要件とは、その要件に1つでも該当してしまえば許可が取れないという、マイナスの要件のことです。
建設業許可における主な欠格要件は、次のとおりです。
個人事業主本人や法人本体、法人の役員(監査役等以外)がこれに該当してしまうと、そのままでは許可を取ることができません。
- 破産して復権を得ていない
- 過去5年以内に建設業許可を取り消されたことなどがある
- 過去5年以内に一定の前科がある
- 精神の機能の障害により建設業を適正に営むことが困難な者
- 暴力団関係者である
このうち、欠格要件に該当する「一定の前科」には、次のものが該当します。
- 禁錮以上の刑に処された
- 次の規定に違反して罰金刑に処された
- 建設業法
- 建築基準法、宅地造成等規制法、都市計画法など建設工事に関する法規
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定
- 刑法204条(傷害)、第206条(現場助勢)、第208条(暴行)、第208条の3(凶器準備集合及び結集)、第222条(脅迫)、第247条(背任)の罪
- 暴力行為等処罰に関する法律
欠格要件は建設業の許可申請時にのみ該当しなければよいものではなく、許可取得後もこれに該当してしまえば許可取り消しの原因となりますので、注意しましょう。
財産的基礎を要すること
建設業の許可を取るためには、財産的な基礎を有していることが必要となります。
一般建設業許可の場合にクリアすべき財産的基礎要件は、次のいずれかです。
- 自己資本が500万円以上であること
- 500万円以上の資金調達能力を有すること
まず、直前決算において「1」の要件を満たすかどうかを確認しましょう。「1」を満たせない場合に、「2」の要件を確認します。
「2」の要件で財産的要件を満たす場合には、金融機関発行の残高証明書もしくは融資証明書が必要です。
なお、特定建設業の場合にはこの要件も加重されており、次の要件をすべて満たさなければなりません。
- 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
- 流動比率が75%以上であること
- 資本金の額が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上であること
社会保険に加入していること
社会保険への加入は以前は建設業の許可の要件とまではされていませんでした。そのため、既に許可を持っている事業者さまから、「うちは社会保険に入っていないけど許可が取れたよ」などと聞くことがあるかもしれません。
しかし、社会保険への加入は2020年10月1日から施行された改正により、現在は許可要件の1つとされています。
そのため、建設業の許可を取りたい場合には、必ずあらかじめ必要な社会保険への加入手続きを済ませておきましょう。
加入すべき社会保険は、国土交通省が公表しているこちらの表で確認することができます。
建設業の許可申請を自分で行うデメリット

建設業の許可申請は行政書士へ依頼されるケースが多いものの、自分で行うことも禁止されているわけではありません。
では、建設業の許可申請を自分で行うデメリットとしては、どのようなものがあるのでしょうか。
主なデメリットは、次のとおりです。
時間と手間がかかる
建設業の許可は許認可の中でも比較的ボリュームの多いものであり、許可申請するためには非常に多くの申請書類が必要です。また、申請内容によって提出したり提示したりすべき書類も一律ではありません。
そのため、自分で申請をしようとすれば、必要書類の確認や収集、作成などに、多大な手間を要してしまう可能性が高いでしょう。
平日の日中に何度も建設事務所へ行く必要がある
建設業の許可申請には膨大な書類が必要となるため、慣れていない人が一発ですべてを完璧に揃えることは容易ではありません。
そのため、申請が受理されるレベルに申請書類を仕上げるためには、何度か管轄の建設事務所へ足を運び、確認してもらうなどの手間が必要となることが多いでしょう。
なお、建設事務所は平日の日中しか開いていませんので、この時間帯に出向く必要があります。
許可取得までに時間がかかりやすい
上で解説をしたとおり、建設業の許可申請には多くの書類が必要となります。
慣れていない場合にはこれらを1つ1つ調べながら作成したり取り寄せたりしていく必要がありますので、申請書類の作成までに時間がかかってしまうことが多いでしょう。
結果的に申請が遅れ、許可の取得が遅くなってしまいます。
また、途中で工事が忙しくなるなどして、途中頓挫してしまうケースも少なくありません。実際、弊所にも、「途中まで自分でやってみたけど忙しくなって手が付けられなくなった」「途中まで作成して建設事務所へ申請に行ったが、多くの修正事項を指摘されて嫌になった」などとご依頼を頂くケースは多く存在します。
事業年度終了届や更新手続きを忘れやすい
建設業許可は一度取得して終わりではありません。
その後も、毎決算後4か月以内に事業年度終了届(決算変更届)を提出する必要があるほか、5年ごとに許可の更新をする必要があります。
特に、許可の更新を忘れてしまえば許可が失効してしまいますし、事業年度終了届が出されていなければ更新が受付されませんので、期限管理が非常に重要です。
許可申請を自分で行った場合には、これらの期限管理も自分で行う必要があります。期限が近くなったからといって、建設事務所から何かお知らせがされるなどということはありません。
一方、許可申請を行政書士へ依頼した場合には、事業年度終了届の時期や更新の時期に、案内をしてもらえることが多いでしょう。
建設業の許可をスムーズに取る方法

建設業の許可をスムーズに取るためには、どうすればよいのでしょうか。
主なポイントを3つ紹介します。
時間に余裕を持って取り掛かる
建設業の許可をスムーズに取るには、時間に余裕を持って許可申請の準備を進めるとよいでしょう。いざ大きな工事の引き合いがあったり元請さんから建設業の許可取得を要請してから申請準備を進めていては遅い場合が少なくありません。
なぜなら、建設業の許可には申請が受理されてから、平日23日(愛知県知事許可の場合)の標準処理期間が定められており、この期間はこちら側の都合で短縮できるものではないためです。
また、どれだけ急いでも、申請書類の作成や取り寄せに2週間から1か月程度(申請に必要な書類や事業者様の協力具合などで変動)はかかります。
そのため、必要になってから慌てて取得するのではなく、先回りをして許可申請を進めておくことをおすすめします。
行政書士へ依頼する
建設業の許可は確認すべき要件が多く、また申請書類も膨大です。これらを、ただでさえ忙しい建設業者様がご自身で作成したり取り寄せたりすることは容易なことではありません。
ご自身で行おうとした結果非常に時間を要してしまい、本業に支障が出てしまったり申請まで至らなかったりすれば本末転倒です。
そのため、建設業の許可申請は、行政書士へ依頼することをおすすめします。
将来の建設業許可取得を見越して準備する
今すぐに建設業の許可申請をしない場合であっても、将来許可申請をする可能性があれば、あらかじめ準備をしておくと、許可申請がスムーズにできる可能性が高まります。
準備しておいたほうがよい内容は、次のとおりです。
確定申告をきちんと行う
法人の場合にはもちろんのこと、個人事業であっても確定申告はきちんと行っておきましょう。確定申告書では月別売上金額が正しく確認できるよう、青色申告で行うことをおすすめします。
そのうえで、確定申告書の控えはしっかり残しておいてください。e-taxからの申請であれば控え一式を保存し、紙での申請であれば税務署の収受印をもらっておきましょう。
なぜなら、経営管理責任者の要件を満たすことを証明する際の資料として、確定申告書の控え一式の提示が求められるためです。
そもそも確定申告をしていなければ、原則としてその期間は経営経験年数としてカウントできません。事業を営んでいたことの証明ができないためです。
また、確定申告をしていても控えがなければ、控えを税務署から取り寄せなければなりません。この取り寄せにも、時間がかかってしまいます。
さらに、確定申告をしていても月別売上が確認できない等不備があれば、次で解説をする工事関係の書類が多く必要となってしまいます。
工事関係の書類を保存する
建設業の許可申請をするにあたって、経営管理責任者の経験を証明するためには、原則として過去の工事に関係する書類の提示が必要となります。
愛知県の場合には、原則として次の1から3のうちいずれかを用意しなければなりません。
- 契約書(写しを提出、原本提示)
- 注文書(写しを提出、 原本提示)+それに対応する請書控(写しを提出、原本提示)
- 注文書、請書控、請求書のいずれか(写しを提出)+通帳など入金が明確に分かるもの(写しを提出)
過去5年にわたる経営経験を証明するものですので、これらを最低でも「年1件」分用意する必要があります。
また、仮に確定申告書に不備がある場合などには、これらの書類が「月1件」分必要となり、非常に大変です。
これらの書類が残っていなければ建設業の許可申請が困難となる場合もありますので、必要な書類はしっかりと作成をしたうえで、保存しておくようにしましょう。
必要な社会保険に加入する
上で解説をしたとおり、現在は適切な社会保険への加入が建設業の許可を取るための要件の1つとされています。
加入手続きや加入していることを証明する書類の発行には時間がかかることがありますので、いざ建設業の許可が必要になってから慌ててしまわないよう、あらかじめ必要な社会保険への加入手続きを済ませておきましょう。
加入すべき社会保険は、国土交通省が公表しているこちらの表で確認することができます。
専任技術者の要件を満たす準備をする
建設業の許可を取るにあたってもっともハードルとなりやすい要件が、専任技術者の配置です。
10年の現場経験は一朝一夕に得られるものではありませんし、資格もすぐに取得できるものではありません。
そのため、将来的に建設業の許可取得を検討している場合には、あらかじめ社内で資格取得を推進する制度を設けたり、個人事業主や役員自らが資格取得を目指したりするなど、要件を満たす準備をしておくことをおすすめします。
法人設立時には事業目的に注意する
法人で建設業の許可を取得する際には、法人の事業目的に建設業を営む旨の記載が求められることが通常です。
たとえば、法人の事業目的に「飲食店の経営」のみが書かれていれその法人で建設業を営むことが読み取れません。そのため、建設業の許可を取得するにあたって、目的を変更(追加)するよう求められることになるでしょう。
また、経営管理責任者の証明において、法人での経営経験を積んだことで要件を満たそうとする場合、その法人の事業目的にその当時建設業を営む旨の記載がされていなければ、工事に関する資料が月1件分必要となってしまいます。
こうしたことから、法人設立をして建設業を営む場合には、事業目的の記載に注意しておきましょう。
なお、どのような文言を事業目的に入れるべきかについての考え方は、都道府県によって異なります。これから法人を設立しようとする場合には、あらかじめ管轄の建設事務所へ事業目的の文言を確認してから設立手続きを行うとよいでしょう。
建設業許可を行政書士へ依頼した場合にかかる費用

建設業の許可申請を行政書士へ依頼した場合、どの程度の費用が掛かるのでしょうか。
最後に、かかる費用の目安について解説します。
行政書士報酬
行政書士報酬は自由化されていますので、事務所によって建設業の許可申請をサポートする報酬は異なっています。
おおよその相場としては、一般建設業の知事許可の場合、10万円から20万円程度であることが多いと言えます。具体的な金額を知りたい場合には、依頼を検討している先の事務所へ問い合わせるとよいでしょう。
また、表面上の金額が低かったとしても、含まれているサポートの内容も異なる場合があります。そのため、金額のみならず、次の点もあらかじめ確認しておくと安心です。
- 報酬に含まれるサポート内容
- 報酬が加算される場合があるのであればその条件(日当が別途かかるケース、たとえば専任技術者を10年の経験要件で取る場合に加算となるケース、複数業種をまとめて申請する場合に加算となるケース、役員の人数が多い場合に加算となるケースなど)
- 相場より極端に安い場合にはその理由
- 書類取得にかかる実費や郵送代は報酬に含まれているのかどうか
弊所の料金体系については、下記のページをご参照くださいませ。
建設事務所へ支払う許可手数料
建設業の許可を申請するにあたっては、建設事務所へ手数料を支払わなければなりません。
一般建設業の知事許可を新規で申請する場合の許可手数料は、一度に申請をする業種の数を問わず、一律90,000円です。
これは、仮に自分で(自社で)建設業許可を申請する場合であっても、行政書士へ申請手続きを依頼する場合であっても、同様にかかる費用です。
書類取得にかかる実費
建設業の許可を申請するためには、非常に多くの書類が必要となります。
これらの書類を取り寄せるためにかかる費用(実費)は役員さんの人数や申請内容によって異なりますが、おおむね3,000円から1万円程度に収まることが多いでしょう。
行政書士事務所によっては書類取得にかかる実費が報酬に含まれている場合もありますので、この点も確認しておくことをおすすめします。
まとめ
建設業の許可をスムーズに取得するためには、事前の準備がもっとも重要となります。許可が必要になってから慌ててしまわないためにも、あらかじめ準備を積み重ねておくとよいでしょう。
また、建設業の許可はボリュームが多く、自社のみ(ご自身のみ)で行うには多大な時間と手間を要してしまいます。建設業の許可を申請したい場合には、ぜひ行政書士へご相談ください。
なごみ行政書士事務所では、知多半島や名古屋市、周辺地域の建設業許可申請を代行・サポートしています。ご依頼をご検討頂いている方は、下記「対応エリアと料金体系」をご覧いただき、コンタクトフォームまたはお電話にて、お気軽にお問合せくださいませ。
対応エリアと料金体系
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※恐れ入りますが、ご依頼いただいた方へのサポートに注力するため、「自分で手続きはするけど、ちょっと聞きたい」という電話やメールでのご相談はお受けいたしかねます。ご自身で手続きをおこなう(別の事務所へ依頼する)前提でやり方だけが無料で知りたい、という方は、管轄の建設事務所などへ直接ご連絡ください。
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