建設業許可を左官工事で取るための要件を詳しく解説

左官工事

建設業許可は工事業種が29に分類されており、必要な工事業種ごとに許可を取得する必要があります。

では、建設業許可を左官工事で取得する場合には、どのような要件を満たせばよいのでしょうか。

この記事では、左官工事で建設業許可を取得するための要件や、左官工事に分類される工事の内容などについて、行政書士が詳しく解説します。

左官工事で建設業許可を取得するべき場面とは

左官工事を請け負う事業を立ち上げるからといって、実は必ずしも建設業許可が必要となるわけではありません。

左官工事を請け負うにあたって建設業許可が必要となる主な場面は、次のとおりです。

500万円以上の左官工事を請けたい場合

左官工事を請け負う場合であっても、「軽微な工事」のみを請ける場合には、建設業許可は必要ありません。

左官工事における「軽微な工事」には、次の工事が該当します。

税込500万円未満の工事

これを裏返すと、税込500万円以上の左官工事を請けたいのであれば、左官工事の建設業許可が必要ということです。仮に建設業許可を取得することなく500万円以上の左官工事を請けてしまえば無許可営業に該当し、重い罰則の対象となります。

なお、税込500万円の判断は、「粗利」などの額ではなく、請負金額で行う点にも注意が必要です。

たとえば、税込800万円の左官工事を請け、そのうち400万円を下請けに出して手残りが400万円になったとしても、もともと請けた金額が800万円(=500万円以上)である以上は建設業許可が必要となります。

元請から建設業許可の取得を要請された場合

仮に500万円未満の工事のみを請ける場合であったとしても、元請さんから建設業許可を取得するよう要請される場合があります。

この場合において、今後もその元請さんから工事を請けていきたいのであれば、建設業許可を取得せざるを得ないでしょう。

最近ではコンプライアンス意識の高まりから、建設業許可を持っていない事業者は現場に入れないとしているケースも、さほどめずらしくない印象です。

自社の営業力を強化したい場合

建設業許可を取得することで、営業力の強化につながる可能性があります。

特に元請けとして工事を請けていきたい場合には、許可があることはアピールポイントの1つとなるでしょう。

また、急に500万円以上の工事について引き合いがあった場合であっても、許可を取得していれば、許可がないことを理由に工事を失注せずに済みます。

建設業許可における左官工事とはどんな工事?

国土交通省が公表している「業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方(H29.11.10改正)」によれば、建設業許可において、左官工事には次の工事が該当します。

工作物に壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維等をこて塗り、吹付け、またははり付ける工事

建設業許可で左官工事に分類される工事とは

建設業許可において、左官工事に分類される具体的な工事は次のとおりです。

  • 左官工事
  • モルタル工事
  • モルタル防水工事
  • 吹付け工事
  • とぎ出し工事
  • 洗い出し工事

建設業許可における左官工事の分類における考え方

その工事が左官工事に該当するかどうか、分類に迷う場合もあることでしょう。その場合には、許可事務ガイドラインによる次の内容が参考となります。

  • 防水モルタルを用いた防水工事は左官工事業、防水工事業どちらの業種の許可でも施工可能
  • ガラス張り工事や乾式壁工事については、通常、左官工事を行う際の準備作業として当然に含まれているものである
  • 『左官工事』の「吹付け工事」と『とび・土工・コンクリート工事』における「吹付け工事」の考え方は、次のとおり
    • 『左官工事』における「吹付け工事」:建築物に対するモルタル等を吹付ける工事をいう
    • 『とび・土工・コンクリート工事』における「吹付け工事」:「モルタル吹付け工事」と「種子吹付け工事」を総称したものであり、法面処理等のためにモルタル又は種子を吹付ける工事をいう

自社で請けている工事が左官工事に該当するかどうか判断に迷う場合には、許可申請を依頼する予定の行政書士か、管轄の建設事務所へ個別で確認されるとよいでしょう。

なお、国土交通省のガイドラインなどの記載がない内容は都道府県によって取り扱いが異なる場合がありますので、インターネットなどで見つけた他の都道府県の事例を鵜呑みにすることはおすすめできません。

左官工事で建設業許可を取るための主な要件

左官工事で建設業許可を取得するために必要な要件は、次のとおりです。

なお、ここでは初めて許可を取得する事業者様の大半が申請することとなる「一般建設業許可」を前提として解説します。

経営管理責任者がいること

建設業許可を取得するためには、経営管理責任者がいなければなりません。

経営管理責任者とは、その名称どおり、建設業の経営を管理する責任者とのことです。

経営を管理する責任者ですので、経営管理責任者は経営陣(個人事業:個人事業主本人、法人:監査役等以外の常勤役員)のなかから選出する必要があります。

経営管理責任者となるためには、建設業の経営に5年以上携わっていたことが必要です。

具体的には、次のような人がこの要件を満たします。

  • 個人事業主として5年以上の建設業経験がある人
  • 建設業を営む法人で5年以上役員(監査役以外)を務めていた人
  • 個人事業主として2年建設業に携わり、法人成りして3年以上が経った人
  • 建設業を営む法人で3年役員(監査役以外)を務め、その後個人事業として独立して2年以上が経った人

なお、経営経験を積んだ建設業の業種は、左官工事以外であっても構いません。

以前は許可申請をしようとする業種での経験かそれ以外の業種での経験かによって必要な経験年数に差が付けられていましたが、現在はいずれも5年の経験でよいこととなっています。

営業所ごとに専任技術者を配置すること

建設業許可を取得するためには、建設業の営業所ごとに専任の技術者を配置しなければなりません。

営業所の専任技術者とは、その営業所における技術上の責任者のことです。

専任技術者は経営管理責任者と同一人物でも構いませんし、いち従業員であっても構いません。ただし、退職されてしまいほかに専任技術者の要件を満たす人が誰もいなければ許可を失ってしまいますので、できるだけ退職しにくい人を選任することをおすすめします。

なお、専任技術者は営業所に専任である必要がありますので、副業や他の建設業者の専任技術者などとなっている人はNGです。

専任技術者は誰でもよいわけではなく、一定の要件を満たす必要があります。専任技術者となれる人は、次の3パターンです。

1:左官工事に携わった経験が10年以上ある人

左官工事について10年以上の現場経験があれば、専任技術者の要件を満たすことができます。

なお、経営管理責任者の要件とは異なり、左官工事以外の他の業種での経験では、原則として要件を満たすことはできません。

たとえば、いくら大工工事の経験が10年以上あったとしても、左官工事の経験がないのであれば、少なくともこの要件では、左官工事の専任技術者にはなれないということです。

2:一定の資格を持っている人

次の資格を保有している人は、左官工事の専任技術者となることができます。

  • 1級建築施工管理技士
  • 2級建築施工管理技士(仕上げ)
  • 職業能力開発促進法の「左官」 ※2級は合格後一定の実務経験が必要
  • 基幹技能者(登録左官基幹技能者、登録外壁仕上基幹技能者)※10 年以上の実務経験を有することが受講資格の一つであり、この受講資格を満たした状態で受講された人が対象

3:所定学科を卒業後、一定年数の左官工事経験がある人

次に関する学科を卒業している場合には、左官工事について3年ないしは5年の実務経験を満たすことにより、専任技術者となることが可能です。

  • 土木工学
  • 建築学

また、必要となる実務経験が3年であるか5年であるかは、次の分類によります。

  • 学校教育法による高等学校もしくは中等教育学校の所定学科を卒業した場合:5年
  • 学校教育法による大学(短期大学を含む)もしくは高等専門学校の所定学科を卒業した場合:3
  • 学校教育法による専門職大学の前期課程の所定学科を修了した場合:3年

欠格要件に該当しないこと

建設業許可には、欠格要件が定められています。

個人事業主本人や法人本体、法人の役員(監査役等以外)が次の要件に1つでも当てはまってしまうと、建設業許可を取ることができません。

  • 破産して復権を得ていない
  • 過去5年以内に建設業許可を取り消されたことなどがある
  • 過去5年以内に一定の前科(原則:禁錮以上、一定のもの:罰金以上)がある
  • 精神障害などで適切な判断能力がない
  • 暴力団関係者である

1つでも気になるものがある場合には、より詳細な要件をご確認されることをおすすめします。

財産的要件を満たすこと

建設業許可を取るためには、財産面での要件も存在します。

財産面の要件をクリアするためには、次のいずれかを満たさなければなりません。

  1. 申請直前の決算において、自己資本が 500万円以上であること
  2. 500万円以上が預金された残高証明書を提出できること
  3. 500万円以上の融資証明書を提出できること

通常はまず「1」の要件を検討し、これを満たせない場合に「2」や「3」の要件を検討することとなります。

社会保険に加入していること

社会保険への加入は、以前は建設業許可の要件とはされていませんでした。

そのため、以前許可を取得した事業者様のなかには、「社会保険は入っていないけど許可が取れたよ」という人もいるかもしれません。

しかし、2020年10月1日から施行された改正により、現在は許可要件の1つとされています。

個人事業や法人などその事業形態によって加入すべき保険は異なっていますので、あらかじめ年金事務所などへ確認のうえ、必要な保険に加入しておくようにしましょう。

まとめ

建設業許可を左官工事で取得するための要件について、詳しく解説してきました。しかし、建設業許可の要件は多く、ご自身や自社が要件に該当しているかどうか判断に迷う場合もあることでしょう。

また、申請時にはそれぞれの要件を満たしていることを証明するために膨大な書類が必要となりますが、慣れていなければこれらの書類を揃えることも困難です。

なごみ行政書士事務所では、知多半島や名古屋市、周辺地域の建設業許可申請を代行・サポートしています。ご依頼をご検討頂いている方は、下記「対応エリアと料金体系」をご覧いただき、コンタクトフォームまたはお電話にて、お気軽にお問合せくださいませ。

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