建設業許可を造園工事で取るための要件を詳しく解説

建設業許可の取り方

建設業許可はぜんぶで29業種に分類されており、必要な業種ごとに許可を取らなければなりません。

では、造園工事に分類されるのは、どのような工事なのでしょうか。

この記事では、建設業許可を造園工事で取得するための要件や建設業許可が必要となる場面などについて、詳しく解説します。

建設業許可での造園工事とは

建設業許可は1つの業種で許可を取れば、どの工事も際限なく請けられるようになるわけではありません。そのため、建設業許可を申請する際には、今後自社が請けていきたい工事がどの工事業種に分類されるのか、正しく知っておく必要があります。

国土交通省が公表している「業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方(H29.11.10改正)」によれば、造園工事とは、次のような工事です。

整地、樹木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を築造し、道路、建築物の屋上等を緑化し、又は植生を復元する工事

分類の判断に迷いがちな工事業種もあるなかで、造園工事は比較的分かりやすいのではないでしょうか。

造園工事の具体例

造園工事に分類される工事の具体例は、次のとおりです。

  • 植栽工事
  • 地被工事
  • 景石工事
  • 地ごしらえ工事
  • 公園設備工事
  • 広場工事
  • 園路工事
  • 水景工事
  • 屋上等緑化工事
  • 緑地育成工事

造園工事かどうか判断に迷うケース

その工事が造園工事に該当するかどうか、判断に迷う場合もあることでしょう。その場合には、国土交通省のガイドラインが参考になります。

造園工事にいて、ガイドラインの内容は次のとおりです。

  • 「植栽工事」には、植生を復元する建設工事が含まれる
  • 「広場工事」とは、修景広場、芝生広場、運動広場その他の広場を築造する工事であり、「園路工事」とは、公園内の遊歩道、緑道等を建設する工事である
  • 「公園設備工事」には、花壇、噴水その他の修景施設、休憩所その他の休養施設、遊戯施設、便益施設などの建設工事が含まれる
  • 「屋上等緑化工事」とは、建築物の屋上、壁面等を緑化する建設工事である
  • 「緑地育成工事」とは、樹木、芝生、草花等の植物を育成する建設工事であり、土壌改良や支柱の設置等を伴って行う工事である

こちらを確認しても判断しかねる場合には、管轄の建設事務所か許可申請を依頼している行政書士へ相談してください。

なお、都道府県によって工事分類の考え方が異なる場合がありますので、他の都道府県の事例を鵜呑みにすることはおすすめできません。

造園工事で建設業許可を取得すべき場面

造園工事を請けるからといって、必ずしも建設業許可を取らなければならないわけではありません。

造園工事で建設業許可を取るべき主な場面は、次のとおりです。

税込500万円以上の造園工事を請けたい場合

1件あたりの請負金額が税込500万円以上となる造園工事を請けたい場合には、建設業許可を取らなければなりません。

仮に、1件あたり500万円以上となる工事を無許可で請けてしまえば、建設業法違反として重い罰則(3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人の場合は1億円以下の罰金)の対象となりますので、注意しましょう。

なお、500万円以上かどうかを判断する際には、次の点にご注意ください。

  • 材料費も含めた金額で判断する:造園工事においては、庭木や庭石など高価な材料を使用する場合もあるかと思いますが、これらの材料費も含めて判断します
  • 注文者が材料を用意した場合も、材料費の市場価格と運送費を含めて判断する:たとえば注文者が別ルートで庭木を仕入れ、その庭木を植え付ける工事だけを請けたとしても、その庭木の金額を加算して判断すべきということです
  • 税込金額で判断する
  • 1件の工事を書面上だけ500万円未満となるよう複数工事に分類することは認められない
  • 下請に出した結果の「手残り」ではなく、請負金額で判断する:たとえば700万円の造園工事を請けるのであればその時点で建設業許可は必要であり、下請けに400万円を出して手残りの金額が300万円(=500万円未満)になったからといって許可が不要になるわけではない

元請から建設業許可の取得を要請された場合

たとえ500万円未満の造園工事しか請けていない場合であっても、元請けさんから建設業許可を取得するよう要請される場合があります。

この場合において、今後もその元請さんから工事を請けていきたいのであれば、許可を取得せざるを得ないでしょう。

自社の営業力を強化したい場合

自社の営業力を強化する目的で、建設業許可を取得する場合があります。

特に造園工事は、元請けとして仕事を請けるケースも比較的多い工事業種です。そのため、建設業許可を取得しておくことで、注文者に対してアピールすることができるでしょう。

また、500万円未満の工事しか請けられないとなれば、現実的に不自由を感じる場面もあるかと思います。

そのため、許可要件を満たせそうな時点で、早めに許可を取得しておくことをおすすめします。

造園工事で建設業許可を取るための要件

建設業許可を造園工事で取得するためには、次の5つの要件を満たさなければなりません。

それぞれの概要は、次のとおりです。

なお、ここでは初めて建設業許可を取得する事業者様の多くが申請することとなる「一般建設業許可」を前提として要件を解説します。

経営管理責任者がいること

建設業許可を取るためには経営管理責任者の存在が必要です。

経営管理責任者とは、建設業の経営を管理する責任者を指します。立場上、原則として経営陣(個人事業の場合:個人事業主本人、法人の場合:監査役等以外の常勤役員)から選任しなければなりません。

経営管理責任者となるためには、過去5年以上建設業の経営経験があることが必要です。ただし、建設業での経営経験でさえあればよく、造園工事以外の工事業種での経験であっても構いません。

建設業の経営経験とは、たとえば次のような経験です。

  • 建設業を営む個人事業主としての経験
  • 建設業を営む法人での役員(監査役等以外)の経験

なお、これらの経験を証明するため、一定の書類が求められます。

営業所ごとに専任技術者を配置すること

建設業許可を取るためには、営業所ごとに専任技術者を配置しなければなりません。

営業所に常勤である必要がありますので、他の建設業者の専任技術者などとの兼任や複数営業所の兼任はNGです。ただし、上で解説をした経営管理責任者とは同一人物であっても構いません。

造園工事において専任技術者となることができるのは、次のいずれかに該当する人です。

造園工事の現場経験が10年以上ある人

造園工事についての現場経験が10年以上ある人は、造園工事の専任技術者となることができます。

なお、経営管理責任者の経験年数カウントとは異なり、造園工事以外の工事業種での経験はカウントできませんので注意しましょう。また、現場以外の経験(経理事務など)もカウントできません。

一定の資格を持っている人

次の資格を保有している人は、造園工事の専任技術者となることができます。

  • 1級造園施工管理技士
  • 2級造園施工管理技士
  • 技術士法の「建設・総合技術監理(建設)」
  • 技術士法の「建設「鋼構造及びコンクリート」・総合技術監理(建設「鋼構造及びコンクリート」)」
  • 技術士法の「森林「林業・林産」・総合技術監理(森林「林業・林産」)」
  • 技術士法の「森林「森林土木」・総合技術監理(森林「森林土木」)」
  • 職業能力開発促進法の「造園」 ※2級は合格後一定の実務経験が必要
  • 基幹技能者(登録造園基幹技能者、登録運動施設基幹技能者)※10年以上の実務経験を有することが受講資格の一つであり、この受講資格を満たした状態で受講された人が対象

一定の学歴と3年ないしは5年以上の造園工事の現場経験がある人

次に関する学科を卒業(修了)し、かつ、その後3年または5年にわたる造園工事の現場経験のある人は、造園工事の専任技術者となることができます。

  • 土木工学(農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地又は造園に関する学科を含む)
  • 建築学
  • 都市工学
  • 林学

実務経験が3年でよいのか5年必要となるのかは、次によって異なります。

  • 学校教育法による高等学校もしくは中等教育学校の所定学科を卒業した場合:5年
  • 学校教育法による大学(短期大学を含む)もしくは高等専門学校の所定学科を卒業した場合:3年
  • 学校教育法による専門職大学の前期課程の所定学科を修了した場合:3年

欠格要件に該当しないこと

建設業許可には一定の欠格要件が定められており、個人事業主本人や法人本体、法人役員(監査役等以外)がこれらに1つでも該当してしまうと、許可を取ることができません

また、許可取得後もこれらに該当してしまえば、許可取り消しの原因となります。

建設業許可における主な欠格要件は、次のとおりです。

  • 破産して復権を得ていない
  • 過去5年以内に建設業許可を取り消されたことなどがある
  • 心身の故障により建設業を適正に営むことができない
  • 過去5年以内に一定の前科(原則:禁錮以上、一部の罪:罰金以上)がある
  • 暴力団関係者である

ここでは簡易的に記載をしていますので、1つでも気になる要件がある場合には、あらかじめ詳細を確認しておきましょう。

500万円以上の財産的基礎があること

一般建設業で建設業の許可を取るためには、500万円以上の財産的基礎が必要です。

具体的には、次のいずれかを満たさなければなりません。

  • 申請日の直前の決算において、自己資本が500万円以上であること
  • 500万円以上預金があること(金融機関発行の残高証明書で確認)
  • 500万円以上の資金調達能力を有すること(金融機関発行の融資証明書で確認)

通常はまず、自己資本を確認します。

自己資本でこの要件を満たせない場合には、次に預金残高で要件を満たすかどうかを確認することが一般的でしょう。

必要な社会保険に加入していること

建設業許可を取得するには、適切な社会保険に加入していなければなりません。

加入すべき社会保険は事業の形態によって異なっており、国土交通省の資料が参考となります。

なお、社会保険への加入は以前は許可要件とまではされていなかったため、すでに許可を取得した事業者様から「うちは社会保険に入っていないけど許可が取れた」などという話を聞くことがあるかもしれません。

しかし、2020年10月1日から施行された改正により、適切な社会保険への加入は建設業許可の要件の1つへと格上げされていますので、注意しましょう。

なお、これ以前に許可を取った事業者様も、適切な社会保険に加入していなければ建設業許可の更新をすることができません。

まとめ

建設業許可を造園工事で取得するための要件について、詳しく解説してきました。しかし、建設業許可の要件は多く、ご自身や自社が要件に該当しているかどうか判断に迷う場合もあることでしょう。

また、申請時にはそれぞれの要件を満たしていることを証明するために膨大な書類が必要となりますが、慣れていなければこれらの書類を揃えることも困難です。

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