建設業許可をとび・土工・コンクリート工事で取るための要件を詳しく解説

とび・土工・コンクリート工事

建設業許可において工事業種は29に分類されており、必要な業種ごとに許可を取得する必要があります。

では、建設業許可をとび・土工・コンクリート工事で取るためには、どうすればよいのでしょうか。

この記事では、とび・土工・コンクリート工事で建設業許可を取るための要件やとび・土工・コンクリート工事に分類される工事などについて、詳しく解説します。

建設業許可におけるとび・土工・コンクリート工事とは

建設業許可は1つの許可を取れば、どのような工事でも請けられるようになるわけではありません。

建設業許可においては工事業種が29に分類されており、自社で請けていきたい工事業種(かつ、許可要件を満たす工事業種)を選択して許可を取得する必要があります。

国土交通省が出している「業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方(H29.11.10改正)」によれば、とび・土工・コンクリート工事に該当するのは、次のような工事です。

  1. 足場の組立て、機械器具・建設資材等の重量物のクレーン等による運搬配置、鉄骨等の組立て等を行う工事
  2. くい打ち、くい抜き及び場所打ぐいを行う工事
  3. 土砂等の掘削、盛上げ、締固め等を行う工事
  4. コンクリートにより工作物を築造する工事
  5. その他基礎的ないしは準備的工事

とび・土工・コンクリート工事の具体例

とび・土工・コンクリート工事に該当する工事の具体例は、次のとおりです。

  1. とび工事、ひき工事、足場等仮設工事、重量物のクレーン等による揚重運搬配置工事、鉄骨組立て工事、コンクリートブロック据付け工事
  2. くい工事、くい打ち工事、くい抜き工事、場所打ぐい工事
  3. 土工事、掘削工事、根切り工事、発破工事、盛土工事
  4. コンクリート工事、コンクリート打設工事、コンクリート圧送工事、プレストレストコンクリート工事
  5. 地すべり防止工事、地盤改良工事、ボーリンググラウト工事、土留め工事、仮締切り工事、吹付け工事、法面保護工事、道路付属物設置工事、屋外広告物設置工事、捨石工事、外構工事、はつり工事、切断穿孔工事、アンカー工事、あと施工アンカー工事、潜水工事

とび・土工・コンクリート工事か迷う工事の考え方

自社で請けている工事や今後受けていきたい工事がとび・土工・コンクリート工事に該当するかどうか、判断に迷う場合もあることでしょう。

その場合には、国土交通省が出しているガイドラインが参考になります。

ガイドラインによれば、とび・土工・コンクリート工事の区分の考え方は、次のとおりです。

  • 『とび・土工・コンクリート工事』における「コンクリートブロック据付け工事」と『石工事』・『タイル・れんが・ブロツク工事』における「コンクリートブロック積み(張り)工事」間の区分の考え方は以下のとおり
    • 根固めブロック、消波ブロックの据付け等土木工事において規模の大きいコンクリートブロックの据付けを行う工事、プレキャストコンクリートの柱、梁等の部材の設置工事等:とび・土工・コンクリート工事』における「コンクリートブロック据付け工事」
    • 建築物の内外装として擬石等をはり付ける工事や法面処理、又は擁壁としてコンクリートブロックを積み、又ははり付ける工事等:『石工事』における「コンクリートブロック積み(張り)工事」
    • コンクリートブロックにより建築物を建設する工事等(エクステリア工事としてこれを行う場合を含む):『タイル・れんが・ブロツク工事』における「コンクリートブロック積み(張り)工事」
  • 『とび・土工・コンクリート工事』における「鉄骨組立工事」と『鋼構造物工事』における「鉄骨工事」との区分の考え方は以下のとおり
    • 鉄骨の製作、加工から組立てまでを一貫して請け負うもの:『鋼構造物工事』における「鉄骨工事」
    • 既に加工された鉄骨を現場で組立てることのみを請け負うもの:『とび・土工・コンクリート工事』における「鉄骨組立工事」
  • 「プレストレストコンクリート工事」のうち橋梁等の土木工作物を総合的に建設するプレストレストコンクリート構造物工事は『土木一式工事』に該当する
  • 「地盤改良工事」とは、薬液注入工事、ウエルポイント工事等各種の地盤の改良を行う工事を総称したものである
  • 『とび・土工・コンクリート工事』における「吹付け工事」とは、「モルタル吹付け工事」及び「種子吹付け工事」を総称したものであり、法面処理等のためにモルタル又は種子を吹付ける工事をいい、建築物に対するモルタル等の吹付けは『左官工事』における「吹付け工事」に該当する
  • 「法面保護工事」とは、法枠の設置等により法面の崩壊を防止する工事である
  • 「道路付属物設置工事」には、道路標識やガードレールの設置工事が含まれる
  • 『とび・土工・コンクリート工事』における「屋外広告物設置工事」と『鋼構造物工事』における「屋外広告工事」との区分の考え方は次のとおり
    • 現場で屋外広告物の製作、加工から設置までを一貫して請け負うもの:『鋼構造物工事』における「屋外広告工事」
    • それ以外の工事:『とび・土工・コンクリート工事』における「屋外広告物設置工事」
  • トンネル防水工事等の土木系の防水工事は『防水工事』ではなく『とび・土工・コンクリート工事』に該当し、いわゆる建築系の防水工事は『防水工事』に該当する

また、これらに記載がなく工事分類に迷う場合には、管轄の建設事務所か許可申請を依頼している行政書士へ相談するとよいでしょう。

なお、工事業種の分類についての考え方は都道府県によって異なる場合があります。

そのため、インターネットなどで見つけた他の都道府県の事例を参考にすることはおすすめできません。

建設業許可をとび・土工・コンクリート工事で取るべき場面

とび・土工・コンクリート工事を請けるからといって、必ずしも建設業許可を取らなければならないわけではありません。

とび・土工・コンクリート工事で建設業許可を取得するべき主な場面は、次のとおりです。

500万円以上のとび・土工・コンクリート工事を請けたい場合

1件当たりの請負金額が税込500万円以上となるとび・土工・コンクリート工事を請けたい場合には、建設業許可が必要です。

仮に許可なく500万円以上の工事を請けてしまえば、無許可営業として重い罰則の対象となる可能性がありますので、注意しましょう。

なお、500万円以上かどうかの判断をする際には、次の点に注意が必要です。

  1. 工事1件あたりの請負金額で判断する。500万円未満になるよう契約書上などのみで無理に分割することはNG
  2. 税込金額で判断する
  3. 元請さんや注文者さんが材料を提供した場合には、その材料費や運送費を加算して判断する
  4. 500万円以上の工事を請け、その一部を下請けに出したことで手残りが500万円未満になったとしても、元々の請負金額が500万円以上であれば許可が必要

元請から建設業許可の取得を要請された場合

たとえ500未満の工事のみを請けている場合であっても、元請さんから建設業許可を取得するよう要請される場合があります。

この場合において、今後もその元請さんから工事を請けたいのであれば、現実的に許可を取得せざるを得ないでしょう。

昨今はコンプライアンス意識が高まっており、建設業許可を持っていない事業者を現場に入れないケースは増えている印象です。

工事の取りこぼしを防ぎたい場合

突然500万円以上の工事の引き合いがあったとしても、建設業許可を持っていなければこの工事を請けることはできません。

仮に受けてしまえば、建設業法違反となり重い罰則(原則:3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人の場合:これに加えて1億円以下の罰金)の対象となる可能性があるためです。

また、建設業許可は取得しようと思ってすぐに取得できるものではありません

膨大な申請書類を作成したり取り寄せたりするために時間(資料の整理状況や事業者様の協力状況などによって異なりますが、おおむね2週間から1か月程度)を要するほか、申請後に休日を除く23日(愛知県の標準処理期間)の審査期間が設けられるためです。

そのため、いざ大きな工事の話があった際の失注を避けるため、許可要件を満たしたら早期に建設業許可を取得しておくとよいでしょう。

建設業許可をとび・土工・コンクリート工事で取る要件

とび・土工・コンクリート工事で建設業許可を取得するには、次の要件をすべて満たす必要があります。

なお、ここでは初めて建設業許可を取得する大半の事業者様が申請することとなる「一般建設業許可」を前提として解説します。

経営管理責任者がいること

経営管理責任者とは、建設業の経営を管理する責任者のことです。

経営を管理する責任者ですので、原則として経営陣(個人事業の場合:個人事業主本人、法人の場合:監査役等以外の常勤役員)のなかから選任しなければなりません。

経営管理責任者となるためには、建設業に関して5年以上の経営経験があることが必要です。以前は許可業種での経験とその他業種での経験で必要年数に差がつけられていましたが、現在(2022年)はいずれであっても5年で統一されています。

なお、この経営経験は建設業許可を持った事業者での経験であることまでは求められません。そのため、たとえば建設業を営む個人事業を開業してから6年目に入る人は、その個人事業で5年以上の経営経験がありますので、この要件を満たすこととなります。

ただし、実際に「建設業に関して5年以上の経営経験」があることを証明するため、必要年数分の確定申告書や工事の請求書、工事代金が入金された通帳のコピーなどが必要です。そのため、きちんと確定申告をしていなかった場合などにはこの証明が困難となります。

専任技術者を配置すること

建設業許可を取得するためには、営業所ごとに専任技術者を配置する必要があります。

専任技術者は必ずしも経営陣の中から選任する必要はなく、いち従業員であっても構いません。ただし、仮に突然退職して他に専任技術者の要件を満たす人がいなければ建設業許可を失ってしまいますので、できるだけ退職の可能性が低い人を選ぶとよいでしょう。

また、営業所に専任である必要がありますので、他社の専任技術者などとの兼務はNGです。

なお、専任技術者は上で解説をした経営管理責任者と同一人物であっても構いません。

専任技術者となれる人は、次のいずれかの要件を満たす人です。

とび・土工・コンクリート工事について10年以上の現場経験がある人

とび・土工・コンクリート工事について10年以上の現場経験がある人は、とび・土工・コンクリート工事の専任技術者となることができます。

なお、経営管理責任者とは異なり、他の工事業種での経験は原則としてカウントできませんので、注意しましょう。

ただし、とび・土工・コンクリート工事の経験が8年以上あり、かつ次の業種ととび・土工・コンクリート工事の経験年数の合計が12年以上あるのであれば、特例的に要件を満たすことが可能です。

  • 土木工事業
  • 解体工事業

一定の資格を持っている人

次の資格を持っている人は、とび・土工・コンクリート工事の専任技術者となることができます。

  • 1級建設機械施工技士
  • 2級建設機械施工技士(第1種~第6種)
  • 1級土木施工管理技士
  • 2級土木施工管理技士(土木)
  • 2級土木施工管理技士(薬液注入)
  • 1級建築施工管理技士
  • 2級建築施工管理技士(躯体)
  • 技術士法の「建設・総合技術監理(建設)」
  • 技術士法の「建設「鋼構造及びコンクリート」・総合技術監理(建設「鋼構造及びコンクリート」)」
  • 技術士法の「農業「農業土木」・総合技術監理(農業・「農業土木」)」
  • 技術士法の「水産「水産土木」・総合技術監理(水産「水産土木」)」
  • 技術士法の「森林「森林土木」・総合技術監理(森林「森林土木」)」
  • 職業能力開発促進法の「型枠施工」※2級は合格後一定の実務経験が必要
  • 職業能力開発促進法の「とび・とび工」※2級は合格後一定の実務経験が必要
  • 職業能力開発促進法の「コンクリート圧送施工」※2級は合格後一定の実務経験が必要
  • 職業能力開発促進法の「ウェルポイント施工」※2級は合格後一定の実務経験が必要
  • 地すべり防止工事士・地すべり防止工事 ※合格後1年の実務経験が必要
  • 基礎ぐい工事
  • 基幹技能者(登録橋梁基幹技能者、登録コンクリート圧送基幹技能者、登録トンネル基幹技能者、登録機械土工基幹技能者、登録PC基幹技能者、登録鳶・土工基幹技能者、登録切断穿孔基幹技能者、登録エクステリア基幹技能者、登録グラウト基幹技能者、登録運動施設基幹技能者、登録基礎工基幹技能者、登録標識・路面標示基幹技能者、登録土工基幹技能者、登録発破・破砕基幹技能者)※10 年以上の実務経験を有することが受講資格の一つであり、この受講資格を満たした状態で受講された人が対象

一定の学歴と3年ないしは5年のとび・土工・コンクリート工事の現場経験がある人

次に関する学科を卒業した人は、とび・土工・コンクリート工事について3年もしくは5年の実務経験を積むことで、とび・土工・コンクリート工事の専任技術者となることができます。

  • 土木工学
  • 建築学

なお、必要とされる実務経験が3年であるか5年であるのかは、次によって異なります。

  • 学校教育法による高等学校もしくは中等教育学校の所定学科を卒業した場合:5年
  • 学校教育法による大学(短期大学を含む)もしくは高等専門学校の所定学科を卒業した場合:3年
  • 学校教育法による専門職大学の前期課程の所定学科修了した場合:3年

欠格要件に該当しないこと

建設業許可には、欠格要件が定められています。欠格要件とは、1つでも要件にあてはまってしまったら許可がされないという、マイナスの要件のことです。

個人事業主本人や法人本体、法人の役員(監査役等以外)が欠格要件に当てはまってしまわないよう、注意しましょう。

建設業許可における主な欠格要件は、次のとおりです。

  • 破産して復権を得ていない
  • 過去5年以内に建設業許可を取り消されたことなどがある
  • 過去5年以内に一定の前科がある
  • 精神の機能の障害により建設業を適正に営むことが困難な者
  • 暴力団関係者である

なお、ここでいう「一定の前科」とは、次のとおりです。

  1. 禁錮以上の刑に処された
  2. 次の規定に違反して罰金刑に処された
    • 建設業法
    • 建築基準法、宅地造成等規制法、都市計画法など建設工事に関する法規
    • 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定
    • 刑法204条(傷害)、第206条(現場助勢)、第208条(暴行)、第208条の3(凶器準備集合及び結集)、第222条(脅迫)、第247条(背任)の罪
    • 暴力行為等処罰に関する法律

欠格要件は許可申請時にのみ注意すればよいというものではなく、許可取得後も仮に該当してしまえば許可取り消しの原因となります。

そのため、許可取得後も継続的に注意が必要です。

適切な社会保険に加入していること

建設業許可を取得するためには、その事業形態などに合わせて適切な社会保険に加入していなければまりません。

加入すべき社会保険は、国土交通省の資料で確認することが可能です。

社会保険への加入は以前は許可要件とまではされていませんでしたが、2020年10月1日から施行された改正により、現在は許可要件の1つとされていますので、必ず加入手続きを済ませておきましょう。

財産的基礎を有すること

建設業許可を取得するためには、財産的基礎要件を満たさなければなりません。

具体的には、次のいずれかを満たすことが必要です。

  1. 申請直前の決算において、自己資本が500万円以上であること
  2. 500万円以上が預金された金融機関の残高証明書を提出できること
  3. 500万円以上の融資証明書を提出できること

まずは直前決算において「1」を満たしているかどうかを確認します。

「1」で要件を満たせない場合には、「2」もしくは「3」の要件を確認しましょう。

建設業許可におけるとび・土工・コンクリート工事と解体工事

解体工事は以前、「とび・土工・コンクリート工事」のなかに含まれていましたが、平成28年6月以降、「解体工事業」が新設され、別の工事業種とされました。

そのため、今後500万円以上の解体工事を請けたい場合には、「とび・土工・コンクリート工事」ではなく「解体工事」で建設業許可を取得することが必要です。

なお、改正後当面(2021年4月まで)は経過措置がありましたが、2021年4月時点で「解体工事業」の要件を満たす専任技術者を置いていない建設業者は許可の取り消しとなっていますので、十分に注意しましょう。

※参考:愛知県HP

まとめ

建設業許可をとび・土工・コンクリート工事で取得するための要件について、詳しく解説してきました。しかし、建設業許可には要件が多いうえ複雑であり、ご自身や自社が要件に該当しているかどうか判断に迷う場合もあることでしょう。

また、申請時にはそれぞれの要件を満たしていることを証明するために膨大な書類が必要となります。慣れていなければ、これらの書類を揃えることも困難です。

なごみ行政書士事務所では、知多半島や名古屋市、周辺地域の建設業許可申請を代行・サポートしています。ご依頼をご検討頂いている方は、下記「対応エリアと料金体系」をご覧いただき、コンタクトフォームまたはお電話にて、お気軽にお問合せくださいませ。

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