建設業許可を管工事で取るための要件を詳しく解説

建設業許可の取り方

建設業許可は、どれか1つの許可を取ればどのような工事でも請けられるわけではありません。29に分けられた工事の種類のなかから、必要な許可を選択して取得することが必要です。

この記事では、管工事で建設業許可を取得するための要件や管工事に分類される工事の内容などについて、詳しく解説します。

管工事の建設業許可はどのようなときに必要?

管工事を請け負う建設業を開業するからといって、必ずしも建設業許可が必要となるわけではありません。

では、管工事で建設業許可が必要となるのは、どのような場合なのでしょうか。

3つのパターンを紹介します。

「軽微な工事」以外の管工事を請けるとき

「軽微な工事」のみを請け負うのであれば、建設業許可は不要であるとされています。

管工事における軽微な工事とは、次の工事です。

  • 1件の請負代金が、税込500万円未満の工事

つまり、1件についての請負金額が税込500万円以上となる管工事を請けたい場合には、建設業許可を取得しなければなりません。

この判断をする際には、次の点に注意しましょう。

1:税込金額で判断する

請負金額が500万円未満かどうかの判断は、税込で行う決まりとなっています。

つまり、税別で約455万円の工事は税込に直すと500万5,000円となり500万円以上となりますので、これを無許可で請けてしまえば無許可営業として罰則の対象になるということです。

2:1件の工事を請求書だけ500万円未満にすればよいということではない

500万円以上かどうかは、1件の工事ごとに判断します。

これは、1件の工事を2枚の請求書や契約書に分ければよいということではありません

合計800万円の工事を契約書上だけで400万円ずつに分けたとしても、これが一連となる1件の工事であれば800万円の工事であることには変わりなく、無許可で請けた場合には罰則の対象となります。

このことは、「同一の建設業を営む者が工事の完成を2以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とする」として、建設業法施行令に明記されています。

3:元請や注文者が材料を提供したときは材料費込で判断する

工事を請けるにあたって、元請けさんや発注者さんが材料を提供してくれる場合もあることでしょう。

管工事においては、たとえば業務用エアコン本体は注文者側で用意して、これを取り付ける工事のみを請け負うケースなどが考えられます。

このような場合に、500万円以上かどうかは、提供された材料費とその運送費を含んだ料金で判断することとされていますので、注意しましょう。

このことは、建設業法施行令において、「注文者が材料を提供する場合においては、その市場価格又は市場価格及び運送賃を当該請負契約の請負代金の額に加えたものを第一項の請負代金の額とする」と明記されています。

4:「手取り」ではなく請負金額で判断する

勘違いをしているケースも少なくありませんが、500万円以上かどうかはいわゆる「粗利」ではなく、請負金額で判断します。

たとえば、元請さんから700万円分の管工事を請け、そのうち300万円を下請けに出したとしても、もともと自社が請けた金額が700万円(=500万円以上)であるため、建設業許可が必要です。

「700万円-下請けに出した300万円=400万円」で判断するわけではありませんので、誤解のないよう注意しておきましょう。

元請から要請されたとき

500万円未満の工事のみを請ける場合には、法律上は建設業許可を取得する必要はありません。

しかし、この場合であっても、元請さんから建設業許可を取得するよう要請される場合があります。これは、昨今のコンプライアンス意識の高まりによるものでしょう。

許可を取得しなければ現場に入れてもらえないため、引き続きその元請さんから仕事を請けたい場合には、許可を取得せざるを得ないかと思います。

自社の営業力を高めたい場合

建設業許可を取得することで、外部へのアピールにつながります。

そのため、たとえば自社が元請けとしてどんどん仕事を取っていきたいという場合には、許可を取得しておくとよいでしょう。

許可を取得しておくことで、不意に舞い込んだ500万円以上の大きな仕事を失注しなくて済むメリットもあります。

建設業許可における管工事とは

建設業許可において、建設業の工事は29業種に分類されています。建設業許可を取得する際には、必要な業種の許可を取得するよう、自社が行う工事がどこに分類されるのかよく理解しておかなければなりません。

国土交通省(参考:「業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方(H29.11.10改正)」)によれば、次の工事が管工事に該当します。

冷暖房、冷凍冷蔵、空気調和、給排水、衛生などのための設備を設置し、または金属製などの管を使用して水、油、ガス、水蒸気などを送配するための設備を設置する工事

建設業許可で管工事に分類される主な工事

管工事に分類される具体的な工事は、次のとおりです。

  • 冷暖房設備工事
  • 冷凍冷蔵設備工事
  • 空気調和設備工事
  • 給排水・給湯設備工事
  • 厨房設備工事
  • 衛生設備工事
  • 浄化槽工事
  • 水洗便所設備工事
  • ガス管配管工事
  • ダクト工事
  • 管内更生工事

建設業許可における管工事の分類における考え方

管工事に該当するかどうか、分類に迷う場合もあることでしょう。その場合には、許可事務ガイドラインによる次の内容が参考となります。

  • 「冷暖房設備工事」、「冷凍冷蔵設備工事」、「空気調和設備工事」には、冷媒の配管工事などフロン類の漏洩を防止する工事が含まれる
  • し尿処理に関する施設の建設工事における『管工事』、『水道施設工事』、『清掃施設工事』の考え方は次のとおり
    • 規模の大小を問わず浄化槽(合併処理槽を含む)によりし尿を処理する施設の建設工事:管工事
    • 公共団体が設置するもので、下水道により収集された汚水を処理する施設の建設工事:水道施設工事
    • 公共団体が設置するもので、汲取方式により収集されたし尿を処理する施設の建設工事:清掃施設工事
  • 『機械器具設置工事』と『管工事』のいずれにも該当しそうな工事は『管工事』
  • 建築物の中に設置される通常の空調機器の設置工事は『管工事』、トンネルや地下道などの給排気用に設置される機械器具に関する工事は『機械器具設置工事』
  • 上下水道に関する施設の建設工事における『土木一式工事』、『管工事』、『水道施設工事』の考え方は次のとおり
    • 公道下等の下水道の配管工事及び下水処理場自体の敷地造成工事:土木一式工事
    • 家屋その他の施設の敷地内の配管工事及び上水道等の配水小管を設置する工事:管工事
    • 上水道等の取水、浄水、配水等の施設及び下水処理場内の処理設備を築造、設置する工事:水道施設工事
    • 農業用水道、かんがい用配水施設等の建設工事:土木一式工事
  • 公害防止施設を単体で設置する工事については『清掃施設工事』ではなく、それぞれの公害防止施設ごとに、例えば排水処理設備であれば『管工事』、集塵設備であれば『機械器具設置工事』等に区分すべき

ただし、これらを確認しても判断に迷う場合もあるかと思います。その場合には、許可申請などを依頼する予定の行政書士か、管轄の建設事務所へ個別で確認してください。

なお、上の内容は国交省が出している内容なので全国共通である一方、ここに記載のない事項については都道府県によって取り扱いが異なる場合もありますので、インターネットなどで検索をした他の都道府県の事例を鵜呑みにするのは危険です。

建設業許可を管工事で取るための要件

管工事で建設業許可を取得するための要件は、次のとおりです。1つずつ確認していきましょう。

なお、ここでは初めて許可を取得する事業者様の大半が申請する「一般建設業の許可」を前提に解説します。

経営管理責任者がいること

建設業許可を取得するためには、経営陣(個人事業:個人事業主本人、法人:監査役等以外の役員)に、経営管理責任者がいなければなりません。

経営管理責任者となるための要件は、原則として、建設業での経営経験(個人事業主としての経験や、法人の役員としての経験など)が5年以上あることです。

この経験は建設業許可を取っている事業者での経験に限りません。そのため、たとえばこれまで5年間許可を取らずに管工事を個人事業で営んできた人であれば、現在の事業における事業主経験でこの要件を満たすことができます。

ただし、許可のない事業者での経験の場合には、実際に工事を請けてきたことを証明するため、工事の契約書や請求書、注文書、通帳のコピーなどの書類が必要です。

また、個人事業での経験の場合には確定申告書の控えのコピーなども提出しなければなりませんので、これらの書類を提出できるかどうかが1つのハードルとなるでしょう。

なお、工事業種に制限はありませんので、たとえば大工工事や屋根工事を専門とする企業で5年間役員を務めた人であっても、管工事の許可を取得する際の経営管理責任者となることが可能です。

専任技術者を配置すること

建設業許可を取るためには、営業所ごとに専任技術者を配置しなければなりません。

この専任技術者は営業所に専任である必要がありますので、他社との兼業などはNGです。ただし、上で解説をした経営管理責任者と同一人物でも構いません

管工事で建設業許可を取得しようとする場合、専任技術者となれる人は、次の1から3のうちいずれかの要件を満たす人です。

1:10年以上管工事の経験がある人

管工事について10年以上の現場経験があれば、専任技術者となることが可能です。

ただし、この経験は他の業種と重複することはできません。

たとえば管工事と大工工事に半々くらいの割合で携わってきた人が、管工事と大工工事両方の専任技術者となるためには、合計20年が必要であるということです。

また、専任技術者になるための経験はその業種での経験であることが必要となります。そのため、たとえば大工工事だけに10年携わってきた人は、管工事の専任技術者となることはできません。

2:一定の資格がある人

次の資格を持っている人は、管工事の専任技術者となることが可能です。

  • 1級管工事施工管理技士
  • 2級管工事施工管理技士
  • 技術士法の機械「熱・動力エネルギー機器」又は「流体機器」・総合技術監理(機械「熱・動力エネルギー機器」又は「流体機器」)
  • 技術士法の上下水道・総合技術監理(上下水道)
  • 技術士法の上下水道(「上水道及び工業用水道」・総合技術監理(上下水道「上水道及び工業用水道」)
  • 技術士法の衛生工学・総合技術監理(衛生工学)
  • 技術士法の衛生工学「水質管理」・総合技術監理(衛生工学「水質管理」) 
  • 技術士法の衛生工学「廃棄物・資源循環」・総合技術監理(衛生工学「廃棄物・資源循環」)
  • 給水装置工事主任技術者 ※交付後実務経験1年が必要
  • 職業能力開発促進法の「冷凍空気調和機器施工・空気調和設備配管」※2級は合格後一定の実務経験が必要
  • 職業能力開発促進法の「給排水衛生設備配管」 ※2級は合格後一定の実務経験が必要
  • 職業能力開発促進法の配管(選択科目「建築配管作業」) ※2級は合格後一定の実務経験が必要
  • 職業能力開発促進法の建築板金(選択科目「ダクト板金作業」) ※2級は合格後一定の実務経験が必要
  • 建築設備士 ※取得後実務経験1年が必要
  • 一級計装士・計装 ※合格後実務経験1年が必要
  • 基幹技能者(登録配管基幹技能者、登録ダクト基幹技能者、登録冷凍空調基幹技能者)※10 年以上の実務経験を有することが受講資格の一つであり、この受講資格を満たした状態で受講された人が対象

管工事の許可を取得したい場合で、10年の実務経験もない場合には、これらの資格の取得を目指すか、これらの資格を保有している人を採用するとよいでしょう。

3:一定の学歴と経験がある人

次の学科を卒業している場合には、管工事について3年または5年の実務経験を満たすことで専任技術者となることが可能です。

  • 土木工学
  • 建築学
  • 機械工学
  • 都市工学
  • 衛生工学

必要となる実務経験が3年であるか5年であるかは、次の分類によります。

  • 学校教育法による高等学校もしくは中等教育学校の所定学科を卒業した場合:5年
  • 学校教育法による大学(短期大学を含む)もしくは高等専門学校の所定学科を卒業した場合:3年
  • 学校教育法による専門職大学の前期課程の所定学科修了した場合:3年

欠格要件に該当しないこと

建設業許可には、欠格要件が定められています。個人事業主本人や法人本体、法人の役員(監査役等を除く)がこの欠格要件に1つでも該当してしまうと、許可を受けることができません。

建設業許可における主な欠格要件は、次のとおりです。

  • 破産して復権を得ていない
  • 過去5年以内に建設業許可を取り消されたことなどがある
  • 過去5年以内に一定の前科がある
  • 暴力団関係者である

このなかで、特に注意すべきは「一定の前科」です。

具体的には、過去5年以内に次の前科がある場合には、欠格要件に該当してしまいます。

  1. 禁錮以上の刑に処された
  2. 次の規定に違反して罰金刑に処された
    • 建設業法
    • 建築基準法、宅地造成等規制法、都市計画法など建設工事に関する法規
    • 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定
    • 刑法204条(傷害)、第206条(現場助勢)、第208条(暴行)、第208条の3(凶器準備集合及び結集)、第222条(脅迫)、第247条(背任)の罪
    • 暴力行為等処罰に関する法律

※刑に執行猶予が付いた場合には、執行猶予期間さえ無事に満了すれば5年を待たずに許可申請をすることができます。執行猶予期間が満了した時点で、刑の言い渡し自体がなかったことになるためです。

なお、欠格要件に該当しているにもかかわらず該当していないと嘘をついて申請をしても、許可申請後の審査でバレる可能性が非常に高いです。その場合には虚偽申請として重い罰則の対象となるほか、場合によってはそこからさらに5年間許可が請けられなくなりますので、虚偽申請は絶対にしないでください。

財産的な基礎があること

建設業許可を取得するには、財産的基礎が十分であることが必要です。具体的には、次の1から3のうちいずれかの要件を満たさなければなりません。

  1. 申請直前の決算において、自己資本が500万円以上であること
  2. 500万円以上が預金された金融機関の残高証明書を提出できること
  3. 500万円以上の融資証明書を提出できること

原則として「1」で要件を満たすかどうかを確認し、これで満たせなければ「2」を検討することとなります。

社会保険に加入していること

社会保険への加入は、2020年10月1日から施行された改正により、許可要件の1つとされています。

加入すべき社会保険は、それぞれ次のとおりです。

  • 法人:健康保険、厚生年金、雇用保険
  • 常時使用する従業員が5人以上の個人事業主:健康保険、厚生年金、雇用保険
  • 常時使用する従業員が5人未満の個人事業主:国民健康保険、国民年金、雇用保険
  • 1人親方:国民健康保険と国民年金

加入すべき社会保険を確認し、建設業許可申請の前に加入手続きを済ませておきましょう。

なお、行政書士事務所である弊所では、社会保険の手続きを代行することはできません。社会保険の加入については年金事務所などで直接手続きをおこなうか、社会保険労務士に代行してもらってください。

まとめ

建設業許可を管工事で取得するための要件について、詳しく解説してきました。しかし、建設業許可の要件は多く、ご自身や自社が要件に該当しているかどうか判断に迷う場合もあることでしょう。

また、申請時にはそれぞれの要件を満たしていることを証明するために膨大な書類が必要となりますが、慣れていなければこれらの書類を揃えることも困難です。

なごみ行政書士事務所では、知多半島や名古屋市、周辺地域の建設業許可申請を代行・サポートしています。ご依頼をご検討頂いている方は、下記「対応エリアと料金体系」をご覧いただき、コンタクトフォームまたはお電話にて、お気軽にお問合せくださいませ。

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